介護保険制度に関わっていても、
人の生活が見えなかった。
一乗さんが介護の世界に入った理由は、自分がやってる仕事に素朴な疑問がわいたからだった。
「制度は分かるけど、現場を知らないままでいいのかなって」
厚生労働省の外郭団体で、介護保険制度に関わる業務をしていた。
書類の向こう側には、人の暮らしがある。
けれど、机上ではその実感がどうしても持てなかったのだ。
「なら、自分の目で見よう」その一歩が、機能訓練員としての10年につながっている。資格をとっていた柔道整復師の専門性を活かしながら、利用者一人ひとりの身体と向き合ってきた。
「利用者さんが、ご自宅でその人らしく生活できるようにサポートする。それができたときの手応えは大きいですし、今後も必要になる仕事だと思っています」
一乗さんの介護は、まず話す。話していくとその日の調子がわかるからだ。ちょっとした変化でも見逃さない。心は見えないけど伝わる。それは技術より大切なことかもしれない。