

アサヒトラストは、輸送事業を主軸にするアサヒ産業株式会社が手がける介護サービス。都内にデイサービス3か所、居宅介護支援事業所1か所を展開しています。二人が働く<アサヒトラストリハビリセンター尾久>では、入浴、食事、レクリエーションのほか、利用者それぞれの状態に合わせた運動プログラムを実施しています。
アサヒトラストリハビリセンター尾久
所在地:東京都荒川区西尾久3-19-3 3F
連絡先:03-6458-2690
アサヒトラストリハビリセンター荒川
所在地:東京都荒川区荒川5-29-1
連絡先:03-5901-9288
アサヒトラストリハビリセンター日暮里
所在地:東京都荒川区東日暮里4-17-11
連絡先:03-5604-5947
URL:https://ds.asahitrust-x.com/

ランニングマシン、バイク、ショルダープレスやレッグプレスのマシンなどが並び、まるでスポーツジムのような空間。そこで運動に励んでいるのは、高齢者の方々。傍らには見守るスタッフの姿があります。
ここは、「ご自身の力を引き出す」ことを目指すデイサービス<アサヒトラストリハビリセンター尾久>。利用者一人ひとりの目的や体力に合わせたプログラムを実施しています。
フロアの一角で、数名がグループになって運動を始めました。その中心で、二人のスタッフが手本を見せて指導しています。
「まずは、右手はグー、左手はパーで、交互に10回グーパーしましょう! 〇〇さん、それはキツネ(笑)」
「次は足踏みしながらやりましょう! いち、に、……がんばれー」

はっきりと大きな声で利用者を導くのは、スタッフの足立凛さんとイ・ジアさんです。二人がこの事業所で働くことになったきっかけは、実は、野球。アサヒトラストの女子硬式野球部に所属し、“介護WITH”な働き方に取り組んでいます。
大好きな野球を続けたいから介護の世界へ
足立さんは入社4年目。小学1年生のときに野球を始めて中学、高校と続け、大学1年生でアサヒトラスト女子硬式野球部に入部します。大学卒業後の進路を考えるタイミングで、いろいろな選択肢の中から、アサヒトラストで野球を続けながら介護の仕事に就く道を選びました。


韓国出身のイさんは、2024年8月に来日しました。韓国では大学で政治を学びながら、女子野球チームHurrahに所属。Hurrahとアサヒトラスト女子硬式野球部は姉妹チームとして交流があり、お互いの選手を受け入れてきました。イさんは現在大学を休学し、ワーキング・ホリデーの制度を利用して、アサヒトラストの野球部に所属しながら介護の仕事に取り組んでいます。

両立を支えるのは睡眠とサポート
二人は、月曜日から金曜日の日中は<アサヒトラストリハビリセンター尾久>で介護の仕事をしています。準備体操や集団運動の指導をしたり、食事の見守りや入浴、歯磨きの介助をしたり。足立さんは利用者の送迎も行っています。


一方で、仕事の出勤前や退勤後の時間を使い、野球のトレーニングも欠かしません。
朝5時半から6時頃には起きて、近くのジムでトレーニングをしてから出勤します。会社の寮の駐車場でも練習できるようになっているので、仕事が終わった後はそこでティーバッティングをしたりします
私も、出勤前にスクワットやダンベルで筋力トレーニングをします。帰ってからも素振りなどやって、夜は8時に寝ます(笑)。介護の仕事と野球、それぞれに支障がないように、なるべく早く就寝して、朝早く起きることを心がけています
毎週水曜日にはチームの全体練習もあります。二人とも16時に仕事を終え、チームのバスで埼玉県三郷市の室内練習場へ。ストレッチ、キャッチボール、バッティング練習などチームメイトと2~3時間汗を流します。


シーズンの4~10月は、介護の仕事がない土日や祝日はほぼ試合。日本国内はもちろん、韓国へ遠征に行くこともあります。大会前には練習時間を確保するため退勤時間を早め、休暇を取りやすくするなど、会社全体でサポートし、チームを応援する環境を作っています。

そうして介護の仕事も野球もがんばることができるのは、二人にとってどちらも大きな魅力があるからこそ。介護の仕事については、「人として成長できる仕事」と足立さんは言います。
朝の送迎のとき、『あなたが来てくれたから今日は1日いいことがありそう』と言っていただいたのはとても嬉しかったです。利用者さんからの声が一番の自分の原動力で、ありがとうという言葉をいただいたとき、よし!がんばろう!って思える。直接感謝の気持ちをいただけるところは介護の仕事の魅力です
イさんも、利用者との関わりの中に介護の仕事の喜びを感じています。
集団運動をするときに、利用者さんに韓国語の『1(ハナ)・2(ドゥル)・3(セッ)』を教えました。次の週、もう忘れちゃったかなと思っていたら、韓国語で話しかけてくれた。私の知らないところで、韓国語を勉強してくれていたんです。感動しました
フィジカルでもメンタルでも良い相互作用がある
介護と野球、それぞれの魅力はもちろん、両立しているからこそのメリットも。例えばスクワットの動きが利用者さんの移動のサポートに役立つなど、野球のトレーニングで得た知識や技術を、介護の現場でも生かすことができています。逆に、介護の仕事で学んだボディメカニクス(骨格や筋肉などの力学的な関係を応用して、最小限の力で動作したり物を持ち上げたりする方法)を、野球の場で活用することもあるそうです。
例えば、重いもの運ぶときには重心を下げたり物を小さくまとめたりすると身体への負担が少なくなります。野球の練習で、大量のボールが入ったかごを移動するとき、重心を下げるように意識しています。下手な持ち方をすると腰や肩の怪我につながるので、気を付けています

イさんは、両立してよかったこととして、コミュニケーションについても話してくれました。
日本に来たばかりの頃は日本語が話すことが難しくて、恥ずかしかった。チームメイトともなかなか話せませんでした。でも仕事のときに利用者の方が日本語を教えてくれて、自信がつきました。利用者さんを通じていろんな価値観にふれることもできて、それが野球でもチームメイトとのコミュニケーションに役立っていると思います

ずっと野球をやってきたので、野球以外には考えていなかったんです。大好きな野球を続けたいという思いと、介護への興味、あとは会社自体がとてもアットホームで働きやすい環境だと感じたので、就職することに決めました