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「デジタル技術でつなぐ重度障害者の就労支援プラットフォーム事業」事業報告会レポート(東京都福祉局)キービジュアル

「デジタル技術でつなぐ重度障害者の就労支援プラットフォーム事業」事業報告会レポート(東京都福祉局)

2026.06.30

イベントレポート

1年間の活動報告会をオンラインで開催

令和8年2月6日(金)に令和7年度「デジタル技術でつなぐ重度障害者の就労支援プラットフォーム事業」事業報告会を開催。遠方にお住まいの方や外出が難しい方にもご参加いただきやすいようZoomのウェビナー形式で実施いたしました。また、当日は手話通訳と文字起こしの2種類で情報保障の確保を行いました。

 

事業概要のご説明

冒頭は東京都福祉局 障害者施策推進部 地域生活支援課 就労支援担当より事業概要をご説明しました。

重度障害者の就労の促進について検討するため、令和3年度の調査実施、令和4年度の検討会開催と、令和5・6年度検証事業実施を経て見えてきた課題に対して、令和7年度からその課題解消のために本事業を開始した経緯と、7年度の活動概要についてご報告いたしました。

【これまでの活動を通じて見えてきた課題と、その改善に向け今年度実施した活動内容】

①重度障害者の就労意欲の促進

②重度障害者の就労に向けた支援体制の確立

③重度障害者と企業とのマッチング

④重度障害者の就労に関する情報の充実

→本人や支援者、企業等様々な主体を「つなげる・つながる」環境の構築が必要。

 

令和7年度の活動報告

【令和7年度の活動に至る背景と課題】

続いて、本事業の受託事業者である特定非営利活動法人ディーセントワーク・ラボから、今年度の活動内容をご報告。
冒頭で、令和5・6年度に実施したモデル事業「デジタル技術を活用した重度障害者に対する就労支援事業」で見えてきた課題として、次のことをお伝えしました。

 

・ご本人とそのご家族だけでは、就労に向けて必要な「各専門機関との調整」「活用できる制度情報や就労事例の収集」を行うのは非常に困難であること

・重度障害者が生活する環境は、就労を目指すために必要な情報が少なく、支援者にとっても同様に情報が乏しい状態にあること

これらの課題を基に、重度障害者と関係機関を「つなげる・つながる」ためのプラットフォームの構築を目指すべく、次の2点を中心に活動したことをご報告しました。

 

1.専用ホームページ「重度障害者就労サポート」の開設と運営

令和5・6年度のモデル事業を通じて分かった課題として、重度障害者が就労を目指す上で必要な情報が不足していることが分かってきました。その現状を補うため、専用ホームページである「重度障害者就労サポート」を開設。

下記に挙げる4つの構成で重度障害者が就労を目指すために必要な情報を発信しています。

■事例を見る

重度障害者の就労事例や企業の雇用事例、対象者が就労を目指す様子をご紹介。重度障害者やそのご家族、関連機関、支援機関に就労に関するイメージを持っていただけるよう事例や参考になる情報を掲載しています。

■情報を知る

当事者とそのご家族、専門機関や企業担当者に向けて法制度や機器の情報を提供しています。国や自治体の制度を利用し、必要に応じて支援機器を導入することで就労に向けた環境を整えられることや、就労を目指すにあたり相談できる専門機関があることなどをご紹介しています。

■イベントのお知らせ

重度障害者の就労や社会参加に関連した各種講演会・シンポジウムの開催情報と、それらのレポートを発信しています。

■問い合わせフォーム

支援を受けたい重度障害者とそのご家族・支援者向け、及び雇用を検討している企業向けの窓口を開設しています。

 

2.コーディネーター業務の配置

重度障害者が就労を目指す際に必要となる専門機関や支援機関、デジタル機器の導入に必要な関連機関との“つなぐ”役割としてコーディネーターを配置しました。

これまで重度障害者とそのご家族だけでは、就労に向けてさまざまな専門機関や関係機関と繋がりを持つことは非常に困難でした。そこでコーディネーターが重度障害者を中心に関係機関を結び、ネットワークを構築する役割を担います。本事業では次のような業務を行いました。

 

・重度障害者各々の状態・生活環境・働く準備性・希望についてのヒアリング

・重度障害者が必要とする企業の障害者雇用事例や求人に関する情報の提供

・重度障害者が就労を目指すに当たり必要なデジタル支援機器を活用できるよう東京都障害者地域ITセンター(現:東京都障害者ICT総合支援センター)や機器設置をサポートする関係機関との連携

・重度障害者が目指したい業務に応じたトレーニングの実施

・業務発注元の企業に向けて業務切り出しのアドバイスの実施と、重度障害者との間に入っての業務遂行のための各種調整

・業務実施にあたっての日報による重度障害者の体調管理の実施 など

併せて、専用ホームページに寄せられたご本人・ご家族はじめ関係者からの就労支援に関するお問い合わせや、企業から重度障害のある方の就労(雇用、お仕事のご依頼、機器の導入を含む環境整備等)に関するお問い合わせに対しても、個々のご要望に応じ、コーディネーターがヒアリングや必要な機関との連携を行いました。

また、①②において今年度対応しました事例として、デジタル機器の導入サポートや、企業からの切り出し業務の調整、専用ホームページからの問い合わせ対応などをご報告しました。

 

3.コーディネーター業務の事例報告

 

A:ご本人に対するデジタル機器の導入サポート

当事者:男性/20代

障害について:「四肢体幹機能障害、呼吸機能障害」

就業時の体制:「臥位」

対象となる重度障害者は先天性の障害があり、日常生活はベッドの上で過ごす時間が多い状態。ここでは視線入力装置の導入に向けた支援の相談に対応しました。機器設置の専門機関からのサポートにより、当事者に最適な機器の位置決め・操作テストを実施。これにより、当事者にとって最適な機器の選定につながりました。

 

B:企業からの切り出し業務に対する調整

当事者:男性/20代

障害について:「身体障害1級1種」

就業時の体制:「臥位」または「車椅子」

対象となる重度障害者は脊髄損傷で24時間人工呼吸器を使用し、ベッドの上で過ごす時間が多い状態ですが、移動の際は介助のもと専用の車椅子を利用。PCのセッティングには介助が必要で、普段から顎マウスを使いPCを操作しています。日常的にPCを操作しているため、今回は予め用意されたシートへの入力作業の実施を検討しました。

就労に向けての特性として、「a.就労経験がない」「b.1週間に1〜2時間程度の労働時間しか確保できない」が挙げられました。そのため、業務を切り出した企業とaとbについて調整が求められました。aに関しては事前に業務によく似たトレーニングを複数回実施し、業務の遂行に問題がないことを確認。bに関しても企業側と納期について柔軟な対応を求めることで了承をいただきました。また、就労するうえで自身の健康管理にも配慮することが社会人として求められるため、日報の記入により当事者と健康状態の確認を行っています。

 

こうした1年の活動を通じて、個々の状況・状態・求める配慮・希望する進路については個別性が高く、対象者によって関わり方にも違いが見られること、重複する場面は少ないことが見えてきました。

 

そして、「個別性の高さ」に合わせて、「就労」も個別性に応じて選択できる状態を準備していくことが望ましいことをご報告いたしました。

 

【来期に向けて】

今年度の事業を通じて重度障害者の個々の状況・状態・求める配慮・希望する進路には違いがあることを確認。ひとりひとりの状態や求める配慮については個別性が高く、本事業に参加された対象者によって関わり方にも違いが見られました。

重度障害者を表す特性のひとつである“個別性の高さ”から「求める配慮」や「支援の形」には大きな違いがあることに合わせて、「就労」も個別性に応じて選択できる状態が望ましいと考えられます。そこで来期に向けた事業では、下記が必要となることをご報告いたしました。

 

・重度障害者の個々の段階に応じた「就労の選択肢」を準備

・「就労の選択肢」は就労支援事業所(継続支援A型・B型、移行支援等)や企業等の参加により「就労の選択肢」の拡大を目指す

・「モデル事業から積み重ねてきた情報・事例の提供」「これまで協力関係を築いた関係機関とのネットワークの活用」による就労支援の方法を具体化

 

講演「重度障害者の社会参加に向けた取り組みについて」

 

10分間の休憩を挟み、後半は特定非営利活動法人 訪問大学おおきなきの相澤純一氏の講演から始まりました。同法人では特別支援学校などを卒業後、障害や病気のために通所施設等の毎日の利用が難しい18歳以上の方のご自宅を講師が訪問し、生涯学習を支援しています。

そうした活動を行う中で出会った、デジタル機器などの支援技術の活用によって、社会とのつながりを深められた事例をご紹介いただきました。

 

【ご友人である進行性筋ジストロフィー症患者の阿部恭嗣さんの場合】

20年間の自立生活後、癌を患い入院生活に入った際、口やあご、指などでスティックを操作しパソコンを操作できる「クチマウス」と出会い、天国に旅立つ前日まで1年5か月の間、毎日、ブログや物語を執筆されたそうです。

阿部恭嗣さんがブログを書き続けた根底にあったものは、多くの仲間の死であったといいます。

相澤先生は「『私の仲間は、みな夢果たさず亡くなった。ゆえに私は書かずにはいられない』。この言葉が、今も私の胸の中で鳴り響きます。恭嗣さんの生き様や思いをより多くの人に知ってもらうこと、それが今の私にできることです」と話してくださいました。どんな状況になっても、コンピューターを通して世界とつながっていられることを体現された阿部さん。2018年には、奥様が絵本作家と出会い、恭嗣さん原作の絵本も発刊されたそうです。

 

【特別支援学校で関わられた進行性筋ジストロフィー症患者のトックン(ペンネーム)の場合】

トックンの人生を変えたのは手作りスイッチと改造トラックボールマウスだったそうです。Windowsのペイント機能を使い、イラストを描きはじめました。

当初は卒業した学校の教員数名に見せるにとどまっていたトックンでしたが、ある日「給料がほしい」とつぶやき、ポストカードにしておおきなきで販売。その後、給料(報酬)を得て、美術展で受賞をすることもできたそうです。

 

【本事業を通じてのキャリブレーションの事例】

本事業で支援機関として対象者の方をサポートしてくださった際の様子もご紹介いただきました。対象者、保護者、コーディネーターとともにおおきなきへ訪問。視線入力機器を試用し、センサーが常に正確な値を示すよう補正・調整する作業(キャリブレーション)とキーボードの大きさ・位置調整によって、格段にスムーズに視線入力ができるようになりました。

相澤氏の「デジタル機器を活用し、自分の思いが“伝わる喜び”を実感してほしい。自分に合った方法で学ぶ機会を持ち続け、“自己実現”を目指してほしい」という熱いメッセージは、本事業の根幹とも共鳴する講演でした。

 

本事業に参加されている対象者へのインタビュー

続いて、本事業に参加されている重度障害のある対象者4名のインタビュー動画をご紹介いたしました。

実際に就労してみての心境や、就労に向けての前向きな思いを、ご自身の言葉で率直に語っていただきました。本報告会後にいただいたアンケートの中でも最も大きな反響をいただいたパートでした。

 

【Y様】本事業を通じて昨年11月から在宅で就労中

本事業に参加して得られたこととして「今まで就職しようと思っていても、あきらめていたことがあったので、この事業に参加できて、できるようになってよかったです」と話してくださいました。また、「パソコンの台は、区の制度を使えたので、購入して使っています。これからも新しい情報があったら積極的に試してみたいなと思います」というエピソードも話してくださいました。Y様は、本事業のコーディネーターとともに東京都障害者IT地域支援センターへ見学に行き、自身に合ったパソコンの固定具を選び、ご自身でお住まいの区の制度を使って購入されるなど、より良いお仕事の環境づくりにも積極的でいらっしゃいます。

 

【K様】特別支援学校の先生からのご紹介で昨秋からご参加

本事業に参加された理由について、「就労したくてもどうすればいいのか困り果てていたところに、以前から気にかけてくださっていた、高校の時の進路担当の先生から連絡をいただき、この事業はどうかな?と勧められて、私にあっているかもと思ったのがきっかけです。やっと仕事に繋がる事業が見つかったかもしれないと嬉しい気持ちになりました」と話し「まだ本格的に就労に向けて動き始めるのはこれからなので、ディーセントワーク・ラボのスタッフさんに助けていただきながら頑張っていきたいと思っています。」と締めくくられました。

K様はIT技術も専門的に学ばれ、就労意欲も非常に高い方ですので、たとえばフルリモートでの勤務などK様に応じた就労の形を共に考えながらサポートしているところです。

 

【I様】特別支援学校の先生からのご紹介で昨秋からご参加

就労を目指すにあたって困っていることや不足していることについて、「体調を考慮しながら、短い時間で働ける求人の情報が不足していたことです」と話し、本事業への参加を通じて目指していることとして、次のように話してくださいました。「自分が求めている求人を見つけて就労することを目指しています」。

短時間での就労の求人が少ないという困りごとは、I様に限らず重度障害者の方からご要望を伺う中で何度も出てきたお悩みの一つでした。通院や生活をすることに日常の多くの時間を割かざるをえない中で、どのように就労時間を捻出するかは、重度障害者の方に共通する課題の一つと言えると思います。

 

【S様】本事業を通じてデジタル機器の環境を整備中

参加前、参加後で何か変わったことについて尋ねると「参加する前は表に出るのが嫌だったのですが、参加してからは表に出られるようになりました」と話してくださいました。このコメントに対する補足ですが、S様は本事業へのご参加前は、積極的に前に出る性格ではなかったそうです。それが、専用ホームページにインタビュー記事が掲載されたことをきっかけに、心境に変化が生まれ、通所先やショートステイ先の施設の方にも記事を見てもらい、宣言した手前、チャレンジしようという気持ちへと変化したとおっしゃっていました。

S様は、現状はパソコンをお持ちではなく、就労への道のりは長いかもしれません。ですが、本事業への参加を通じて心境面に大きな変化が生まれたというお話は、関係者全員にとっても励みとなるコメントでした。

 

今年度を踏まえた次年度に向けて

 

最後に1年間の活動の中で、多大なるご協力・ご参画をいただいた皆様に感謝をお伝えしました。また、今年度の取り組みを踏まえ、次年度も重度障害のある方の「働きたい」という思いを第一に、一人ひとりが望む就労の形や社会参加が叶う環境づくりをさらに推し進める意向も伝え、盛況のうちに幕を閉じました。

問い合わせ窓口

問い合わせ窓口:
東京都福祉局 障害者施策推進部 地域生活支援課

TEL:03-5320-4158