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【第4回】誰にでも働けるチャンスを。完全テレワークへの挑戦。キービジュアル

【第4回】誰にでも働けるチャンスを。完全テレワークへの挑戦。

スタッフサービス・クラウドワーク様

2026.03.23

企業の雇用事例

INTRODUCTION

人材派遣事業を営むスタッフサービスグループにおいて、2015年に特例子会社であるスタッフサービス・ビジネスサポートの在宅就労事業として発足し、重度障害のある方々の就労を推進するために全国規模でのテレワーク雇用を実現してきたスタッフサービス・クラウドワーク。九州エリアでの8名の採用からはじまった同社は現在、600名を超える雇用を実現するまでに至っています。取り組みにあたっての想いや現場での工夫、そこで見えてきた障害者雇用の新しい形、今後の展望について、同社の歩みに深く関わってきた岡崎様、酒本様のお二人にインタビューします。

(今回は全4回連載の第4回目です)

情報取得の壁を超える「オンライン仕事体験会」。

 お二人は、障害者雇用が今後さらに発展していくにあたっての課題をどのように捉えていらっしゃいますか?

酒本様:特に 重度身体障害者は外出がままならないため、情報取得が困難な方が多く、結果として就労に結びつきにくい構造があります。外出が困難なため、ハローワークや支援機関に行けない。苦労して行っても通勤前提の求人しかなく、登録をためらってしまう。訓練したくても通所が前提であったりと、支援機関とつながりにくく、情報を得られる機会が非常に少ないという現状があります。また、家族や支援者が「わざわざ働かなくてもいいのではないか」と本人の挑戦の機会を逃してしまうというケースも見られます。本人や周囲のバイアスもあって、多くの方々が就労できずに埋もれてしまっています。 結論として、外出困難な重度身体障害者の方々ほどテレワークという情報が届いておらず、なかなか応募につながっていないのが現状です。

― せっかくテレワークで働ける機会が社会の中にあったとしても、その情報が届かなければ、働く人は増えません。

酒本様:そこにどう浸透させていくかが非常に重要なポイントだと考えており、解決策として現在取り組んでいるのが「オンラインの仕事体験会」です。この体験会は、実際にテレワークを体験してもらうことで、就労の選択肢の一つとして考えてもらうことを目的としてスタートしました。全国のハローワークや支援機関、リハビリ施設、特別支援学校など、多岐にわたる場所で開催しています。 目的は、体験会を通じて障害のある当事者だけでなく、その関係者の方々にも在宅で働くイメージを持ってもらうことです。参加の間口を広げ、関係者の方々にも参加してもらっています。内容としては、まず自己紹介からアイスブレイクを行い、テレワークで働く上でのポイントを説明します。 その後、画面共有を使って、エクセルを使った実際の作業体験をしていただきます。ここでは、自己発信の大切さやテレワークの難しさも合わせて体感してもらいます。分からないことがあったときは、会場内に同席している支援者に頼らず、必ずモニター越しにいる弊社スタッフに聞いてもらうようにお願いするんです。

― 実践的な体験を通して、テレワークのイメージを具体化しているのですね。

仕事体験会で育まれる「自分にもできる」という自信。

酒本様:この体験会では、障害のある当社の在宅社員が講師を務め、先輩社員にも登場してもらい、質疑応答の時間も設けています。 仕事を始めて大変だったことや、就業後の気持ちの変化など、リアルな当事者の声を聞くことによって、「もしかしたら自分でもやれるかもしれない」「これなら安心して働けるかもしれない」といった自信につながるんです。

―  これから就労を考える方だけでなく、社員の方にとっても大切な場ですね。

酒本様:この体験会をきっかけに入社された方も多数いらっしゃいますし、学校や支援機関、リハビリ機関にとどまらず、各地の行政機関からの連携の打診や、教育委員会からもカリキュラムへの導入についてお話をいただくなど多方面にも影響が広がり始めています。一人でも多くの方々に就労の可能性、チャンスが届くようになっていることは、とても嬉しいですね。

仕事は、人生をいい方向に向かわせてくれることがある。

―  これまで事業を進めてこられた中で、特に印象的だった社員のエピソードや、心に残る出来事があればお聞かせいただけますか?

岡崎様:社員のエピソードはたくさんありますが、やはり「働くこと」を通して、重度身体障害のある方の体調が良くなったり、能力が上がったりする、いわゆるリハビリ効果が目に見えて現れることがあります。これは、一人の社員の例ですが、脳血管系の疾病の影響で声が出なくなり、ミキサー食しか摂れなかった方がいらっしゃいました。しかし、当社に入社し、ミーティングで言葉を発する機会が増えたことで、今では電話でも普通に会話ができるほど明確に言葉が出るようになりました。 家族も非常に驚かれていたのですが、ミキサー食だったのが、今ではハンバーガーも食べられるようになったそうです。言葉を発することで筋力がつき、食べる力も強くなったのかもしれません。外出もできず、全てを失ったと伏せっていた時もあったそうです。ご家族も「お父さんが元の人格に戻った」と伝えてくださいました。時に家族だけでは、気を使って新しいことにもチャレンジしなくなることもあります。仕事を通して体力も機能も取り戻したことで、その人個人の人格や生活、ひいては生活の質自体が大きく向上したのではないでしょうか。まさに奇跡ですよね。

仕事はお金だけでなく、自己肯定感や人生の質にも大きな影響を与えてくれるのですね。

岡崎様:人とのコミュニケーションを通して人は成長します。私たちの会社では、意図的に雑談を促し、話す機会を設けているので、身体的にも健康的にも、そして生活面においても、社員が自信を取り戻す要素になっていると思います。また、自宅にいると「頼る」ことが中心になりがちですが、パソコンを通じて仕事をする中で、社員たちは「頼られる側」に戻ることができます。他の社員ができないことを「私がやりますよ」とサポートする中で「助けることができる自分」を取り戻すのです。これが、特に障害のある社員にとって大きなモチベーションになるのではないかと思います。

酒本様:私からも最近のエピソードをお話しさせてください。関東エリアのマネージャーをしていた頃、なかなか自分に自信が持てない女性の社員がいました。入社当初は気持ちの部分が原因で休むこともありましたが、当社に入社し、皆と触れ合ううちに、どんどん自信をつけていきました。 自分から人に教えたり、研修をする役割を担ったりするようになり、さらに自信をつけ、ついに最近リーダーに登用されたのです。そのチームは事業部への貢献度も非常に高く、毎年4月に開催される事業部のキックオフで優秀チームとして表彰されることになりました。普段オンラインでしか仕事をしていない彼女が、新しいリーダーとして現地の表彰式に参加し、一人で登壇してしっかりスピーチをしてくれたのです。その姿を見たとき、働く中で人と触れ合い、自信をつけていく成長の姿に非常に感極まるものがありました。

 

仕事というものの可能性。テレワークの可能性。

 

岡崎様:重度身体障害のある社員には、これまでなかなか恋愛や結婚、子育てといったライフイベントに対してハードルを感じていた方々も多いようです。彼ら彼女らが、仕事を通じて自信をつけ、結婚を決意したり、お子さんを育てる決意をされたりするケースも出てきました。社内結婚はもちろんのこと、社外の方と結婚し、育休を取得して子育てをしている社員もいます。立ち上げ当初は全くイメージできなかったことです。仕事が、生活や人生そのものに良い影響を与え、社員が就労を生活の大切な一部として捉えてくれていることに、非常に喜びを感じています。

― 一人ひとりの仕事による良い変化がありありと浮かぶ、素敵なエピソードです。最後に、このサイトをご覧頂いている方々に対して伝えたいことはありますか。

岡崎様:テレワークの可能性を伝える事例として、2016年の熊本地震の際の話があります。お伝えしたとおり、この事業は2016年1月に九州で8名の1期生が入社したところからスタートしましたが、熊本地震はその年の4月に起こりました。当時、在籍していた22人中7人が被災地におり、正直、彼らが戻ってこられないのではないか、立ち上げたばかりの組織が崩れてしまうのではないか、と不安でした。しかし、連休明けには、被災した社員も含め全員が戻ってきました。グループの他の熊本の拠点がまだ通常業務に戻れていない中、重度障害者である私たちの仲間が、テレワークという形態だからこそ一番早く正常化できたという事実は、テレワーク雇用の強さを実感させるものでした。設立当初から「イキイキ働ける職場を作る」と言っていましたが、熊本以外の社員たちが、被災した仲間が戻ってきたことを我が事のように喜んでいる姿を見て「オンラインでもちゃんと職場を作れる」という自信を持つことができたのです。これから就労を目指す方々には、「心配」ではなく「強み」として、テレワークの可能性を伝えたいと思います。

酒本様:テレワークと聞くと、一人で黙々と淡々と働く印象を持たれがちですが、実際は自宅という、住み慣れていて最も安心安全な環境、そしてご自身の障害に合わせた工夫も凝らされている場所だからこそ、本来持っている自分の力を発揮しやすく、仕事を通して社会ともつながるものだと考えています。私たちにとって、このPCモニターは単なるモニターではなく、仲間と社会とつながるコミュニケーションの「窓」です。重い障害があっても、テレワークで働けることをより多くの方々、当事者を含め、知っていただきたいと願っています。

(スタッフサービス・クラウドワークの連載は今回で終了です。ありがとうございました!)

岡崎 正洋 / スタッフサービス・クラウドワーク シニアアドバイザー プロフィール画像

Profile岡崎 正洋 / スタッフサービス・クラウドワーク シニアアドバイザー

新卒から人事系を中心に経験を積み、2003年5月スタッフサービスグループの人事部門にキャリア入社。人事労務担当を務める。2012年からスタッフサービスグループの特例子会社であるスタッフサービス・ビジネスサポートに着任。2015年9月にスタッフ3名で在宅就労事業(現在のスタッフサービス・クラウドワーク)の立ち上げを担当。以降、九州、近畿、関東、東北、東海エリアと拠点設立を歴任。2023年8月に定年退職後、同社シニアアドバイザーに着任。

酒本 速男 / スタッフサービス・クラウドワーク エリア統括部 ゼネラルマネージャー プロフィール画像

Profile酒本 速男 / スタッフサービス・クラウドワーク エリア統括部 ゼネラルマネージャー

2004年にスタッフサービスに入社。医療介護領域のメディカル事業本部にて、人材サービスの営業に携わる。2020年より、スタッフサービス・クラウドワークに異動し、北海道・東北・関東のエリア責任者を務める。テレワーク活用による障害者雇用の推進と事業拡大に従事。