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【第2回】「できる」に向き合えば、全員でいい方向に向かえる。キービジュアル

【第2回】「できる」に向き合えば、全員でいい方向に向かえる。

OKIワークウェル様

2026.03.13

企業の雇用事例

INTRODUCTION

OKI(沖電気工業株式会社)の特例子会社として2004年に設立されたOKIワークウェルは、「通信」というOKIグループの強みを生かし、重度身体障がい者の在宅雇用を全国規模で推進してきました。社員一人ひとりの個性と能力を最大限に引き出す環境をつくり続けています。同社の設立背景から、独自のバーチャルオフィスシステム開発、そして社員の成長を支えるきめ細やかな取り組み、さらに未来への展望まで、その歩みに深く関わってきた加藤哲義様にお話を伺いました。

(今回は全3回連載の第2回目です)

仕事は、難しい。その厳しさも、ちゃんと知ってほしい。

― 開発された「ワークウェルコミュニケータ」は現在も利用され続けているそうですが、どのようなものなのでしょう?

加藤様:当初はWindowsアプリとして、トランシーバーのように1対1で話せる機能から作りました。やがて一対多で話せる仕様に変更し、現在は複数のワークスペース(会議室)がアプリケーションの中にあって、それぞれの会議室に入ると複数人と同時通話ができるような機能となっています。また、スマホやタブレットなどOSを選ぶことなく利用できます。開発を進める上で最も重視したのは「障がいのある社員たちがアプリを使う」という点です。様々な社員がいますので、シンプルに作らなければならないということです。例えば、ベッド上で生活する方、片手しか使えない方、人差し指しか使えない方など、多様なニーズに応えるには、いかに簡単に操作できるかが重要でした。技術者としては、あれもこれもと機能を追加したくなりますが、余計な機能は操作を複雑にし、ボタンが増えれば使うのも大変になります。また、プライバシーの観点から、例えばパジャマ姿で横になっている方が監視されているような機能は適切ではないと考え、あえてカメラ機能は設けませんでした。シンプルに、シンプルに作り込んでいったのです。

― なるほど。このツールが、いわばみなさんのオフィスや会議室のような役割を果たすわけですね。加藤様ご自身の仕事内容はどのようなものなのでしょうか?

加藤様:2025年4月から現場を離れ、部長職になりました。今は事業検討や承認業務などが主な仕事ですが、これまでの10年間は現場で技術レビューや設計アドバイス、営業なども担当していました。予定が空いている日があると、今でも外に出て営業をしたり、技術的な改善提案をしたりしています。現社長(三代目)に「ほどほどにね」と言われています(笑)。

― それだけ、現場のお仕事に愛着を持たれていたのですね。OKIワークウェルの主な事業についても教えてください。

加藤様:当社はOKIグループの特例子会社なので、仕事の9割はグループ内からの案件です。残りの1割が外部からの仕事になります。グループ内からの仕事としては、ホームページの更新やリニューアル、プログラム開発などがあります。例えば、最近ではコロナ禍でテレワークが広がり、フリーアドレスになったグループ内で、座席管理システムを開発するといったことも行っています。他にも、ホームページのデザインや、イラスト、動画、漫画などのコンテンツ制作の仕事もあったりしますね。また、データ入力や秘密書類のシュレッダー作業、名刺印刷といった軽作業も我々の仕事です。外部に向けての仕事というのは「教育事業」です。障がいがありながら社会参加を目指している求職者に対し、自治体と連携してIT訓練を提供しています。在宅で働くために必要な技術を修得し、就職できるように後押しする事業です。

― それぞれの方の障がい特性に合わせて、幅広い業務を担当されているのですね。プログラミングのような専門的な仕事は、どのように教育されているのでしょうか?

加藤様:基本的な考え方として、最も重視しているのは「本人のやる気」です。「働ければどんな仕事でもいい」というのではなく、できるかどうかわからなくても「これがやりたい」という強い意識を持っていることが大切です。そういう方であれば、未経験でも十分技術を修得できます。どうやってやりたい仕事を実現するかを考えていけばいいですから。当社の特徴としては、年に一度、4月に新入社員を採用しています。年間で随時採用という企業さんも多いと思いますが、このやり方にこだわる理由は、「同期」の絆が社員の定着につながるためです。入社後3ヶ月間、新入社員同士であたかも机を並べたように仕事に関する技術を学んでいく中で絆が生まれ、配属後、テレワークで顔を合わせる機会が少ない中でも、同期がいれば頼れる存在になります。3ヶ月間の研修では、情報通信企業である当社の強みを生かし、ソフトウェア工学の基礎を学びます。お客様のニーズを整理する要件定義、設計、製造、テスト、そして納品というソフトウェア開発の一連の流れを覚えた後、プログラミング言語(現在はC#)にもチャレンジします。最後の1ヶ月は、学んだことを実践する形で、小さなプログラムの設計から製造、テストまでを実際に行ってみるのです。

 

なるほど、同期はキャリアの中でも大切な存在になりますからね。そして、研修はかなり実践的なもので驚きました。難易度が高いのではないでしょうか。

加藤様:私のポリシーは、「できたからすごい」ではなく「仕事って、難しいんだ」ということを学んでもらうことです。器用にこなせる社員もいますが、できなくても問題ありません。「仕事って本当に大変なんだ」ということを理解してもらえればそれでいい。仕事の厳しさや、その中にある楽しさ、手順を踏むことの大切さを、この3ヶ月で教えています。たとえプログラミングに自分は向いていないと分かっても、その時はまた、別の仕事を試してみればいいのです。

単なるスキル習得だけでなく、仕事への向き合い方を学べるような3ヶ月なのですね。

「できない」と「できるかも」の間にある気持ちの変化に寄り添う。

― 社員さんの中には、これまで挫折経験を持つ方もいらっしゃると思いますが、もし本人が「難しい」と感じた際にはどのようにコミュニケーションを取られているのでしょうか?

加藤様:仕事をやめてしまう、というケースはそれほど多くないのですが、もしあるとすれば、やはり「自分はできない」と感じてしまうことですね。障がいのある方々は、経験する機会が限られていたり、成功体験も少なかったりするためか、自己効力感が低い方もいて、そういった発言が時々出てくるのは事実です。その場合、私はまず「どこがダメだと思うの?」と具体的に聞きます。すると最初、本人は「たくさんある」と言うのですが、実際に挙げていくと、そんなにたくさん出てこないんですよ。私は、自分のダメなところを10個以上挙げることができます(笑)。「ほら、私も一緒。こんな私でも今までやってきたんだからきっとできるよ」と伝えた後に、社員が書き出した自分のダメだと感じているところを、一つひとつ具体的に一緒に考えてみたり、こうしたらどうかと話をします。そうすると「できるかもしれない」と前向きになってくれることが多いですね。それじゃあ、騙されたと思ってやってみよう、と。

― 一人ひとりの心に寄り添い前を向かせる、とても深いコミュニケーションです。

加藤様:それでもダメなケースもあります。例えば、周囲の目が気になる、同期がうまくいっているのに自分だけが遅れている、と感じる場合です。その時は「周りのことなんか気にしなくていいんじゃないの?」と伝えますね。「でも私は、みんなからこう思われている」と言うのであれば、「逆に自分はこんな人間で、こことここはダメなんです、と共有できたらもっと気持ちが楽になるんじゃない?」と提案します。他の人がどう思っているか気になるのであれば、むしろ「みんな私のことを知っている」と思える状態をつくると、仕事が楽になることがあるんです。そうやって自己の開示を促すこともあります。また、手が遅い方や、これまでパソコンに触れてこなかった方には、画面共有をしながら「どこまでわかる?」と聞き、プログラムが書けないのであれば「じゃあ日本語で書いてみて」と促し、それをプログラムに落とし込む作業をマンツーマンで、短時間ずつサポートします。ずっとではなく、1日30分といった短い時間でも、寄り添って見てあげることで、「あ、できるかも」と思ってくれるようになるんです。私がするのは、それだけです。

― 加藤様ご自身が、障がいのある社員の皆さん一人ひとりに深く向き合い、可能性を信じているからこそできることなのだと思います。

(第3回に続きます。最終回は、OKIワークウェルが大切にしている哲学、社員の方々との印象的なエピソード、そして未来への展望についてお伺いします)

加藤 哲義 / OKIワークウェル 事業部長 プロフィール画像

Profile加藤 哲義 / OKIワークウェル 事業部長

通信・情報通信分野での開発経験を持つ。OKIワークウェルでは、独自のバーチャルオフィスシステム「ワークウェルコミュニケータ」の開発に携わり、在宅勤務の現場を支える。現在は事業部長として、障がいのある社員への深い理解と寄り添う姿勢で、社員の成長と自立を力強く後押ししながら、新たな事業領域の開拓にも尽力している。精神保健福祉士・社会福祉士・介護福祉士の資格も持つ。