「介護WITH」事業の紹介セミナー
「東京都『介護WITH』事業~介護人材確保・柔軟な職場づくり~」を実施いたしました

2025.3.7(金)更新 イベント

2025年2月6日(木)、東京都「介護WITH」事業の紹介セミナー「東京都『介護WITH』事業~介護人材確保・柔軟な職場づくり~」を実施いたしました。
本セミナーでは、柔軟な働き方を実現する介護職場づくりに関心をお持ちの介護施設経営者や介護職の皆様に向け、以下の内容を紹介いたしました。

セミナー登壇者のご紹介
秋本 可愛

秋本 可愛様

株式会社Blanket 代表取締役 KAIGO LEADERS 発起人

平成2年生まれ、山口県出身。大学時代に、介護現場でのアルバイトを通し「人生のおわりは必ずしも幸せではない」現状に課題意識を抱き、2013年(株)Join for Kaigo(現、(株)Blanket)設立。「全ての人が希望を語れる社会」を目指し介護・福祉事業者に特化した採用・育成支援事業「KAIGO HR」を運営。日本最大級の介護に志を持つ若者コミュニティ「KAIGO LEADERS」発起人。#ケアワーカーをケアしよう 発起人。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。2021年よりNHK中央放送番組審議会委員に就任。2022年より厚生労働省「介護のしごと魅力発信等事業・事業間連携等事業」企画委員就任。

【受賞歴】
第10回若者力大賞受賞、Asia Pacific Eldercare Innovation Awards 2021「INNOVATION OF THE YEAR – CAREGIVER MODEL」部門にて最優秀受賞。

介護WITHが実現する新しい働き方

東京都では、介護人材の確保と働きやすい柔軟な職場環境の実現を目指して「介護WITH」事業を推進しています。今年度、9事業者の13事業所を「介護WITH事業者」として選定し、その活動を支援しています。
本事業では、選定された事業者に対し、100万円の奨励金を支給し、柔軟な働き方の実現を支援しています。
また、都民に向けて「介護WITH」の考え方を広く周知するためにWebサイトやポスター、転職フェアへの出展などを通じて情報発信を行い、介護職の魅力を広める活動をしています。

選定事業所の取り組み紹介

今回選定された9事業者の中から、5つの事業者の紹介をいたしました。
それぞれの事業所で、職員の方々が自身の夢や趣味を大切にしながら、介護の仕事で活躍できる環境を整えています。
スポーツや芸術、音楽といった多様な分野で培われたスキルが、実際に介護の仕事にどのように活かされているのか、そして事業所が職員の方々へどのような支援を行っているのかを詳しくお伝えしました。

「介護WITH事業所」に選定された9事業者一覧
アサヒ産業株式会社:WITH「野球選手」

現役の野球選手が介護職と競技活動を両立。水曜日の午後は練習を優先し、試合期間中は柔軟にシフトを調整しています。また、体の鍛え方(=ボディメカニクス)を生かして、利用者向けに運動プログラムを提供しています。

介護への影響:
・ボディメカニクスを活かした運動プログラム提供(腰痛予防等)。

支援策:
・室内練習場の創設
・大会期間中のシフト調整
・資格取得支援で引退後のキャリアサポート

株式会社ケアメイト:WITH「役者」

舞台俳優としても活動する職員が舞台期間中に有給をまとめて取得し、終演後は介護の仕事に集中しています。役者として培った観察力を利用し、利用者の気持ちを汲み取った柔軟な対応が評価されています。

介護への影響:
・状況に応じた演じ分けが可能になり、対応力が向上。

支援策:
・舞台公演前は有休取得を推奨
・シフト調整で生活基盤の給与を確保

社会福祉法人善光会:WITH「ライフル射撃」

ライフル射撃の選手が働く善光会では、競技で培った集中力と判断力を活用し、利用者の体調変化にも迅速に対応。シフト調整の工夫により競技活動も応援しています。

介護への影響:
・一瞬の判断力が養われ、利用者の体調変化に素早く対応できる
・高度な集中力とメンタルコントロールが介護にも活かされる

支援策:
・柔軟なシフト調整
・アスリート支援制度の活用
・職場全体での応援体制を構築

社会福祉法人奉優会:WITH「クリエイター(ストリートダンス・音楽制作)」

ストリートダンスや音楽制作の経験をレクリエーション活動に生かして、高齢者に身体の使い方を教えたり、場面に合った音楽で生活に彩りを添えるなどしてクリエイティブな能力が生かされています。

介護への影響:
・ダンス経験を活かした介護予防やレクリエーション活動
・施設のシーンに適した音楽活用(入眠サポートなど)

支援策:
・柔軟な休暇・時短制度
・レクリエーションや地域活動で自身の活動を披露する機会を提供

合同会社アワーディケイド:WITH「総合格闘家/ミュージシャン」

アワーディケイドでは、レクリエーション時にギター演奏を取り入れ、利用者が自然と歌い出すなど、音楽の力で明るい日常を提供しています。

介護への影響:
・音楽の力で利用者の生活を豊かにする。

支援策:
・チケット買取やスタッフ総出での応援
・スポンサー支援(治療費・ユニフォーム等
・シフト調整による柔軟な勤務体系

選定事業所の共通ポイント

「介護WITH」事業所には下記のような共通点があります。

1.
シフトの柔軟性

夢や趣味と両立できるよう柔軟にシフト調整することが出来る制度を整備。

2.
応援できる関係性と風土

仕事以外の夢や趣味を共有し、互いに支え合う文化を醸成。

3.
介護との相乗効果

様々な分野で培ったスキルが、介護の仕事に相乗効果をもたらし介護の質向上につながる。

4.
夢を応援することが人材確保につながる

夢や趣味を通じて仲間が集まりやすくなる。

「介護WITH事業所」インタビュー

パネリストのご紹介
大脇 秀一

大脇 秀一様

社会福祉法人とらいふ 業務執行理事兼
デイサービスセンターとらいふ武蔵野管理者

昭和38年生まれ。愛知県出身。名古屋大学経済学部を卒業し、以後27年間に亘り総合商社、経営コンサルタント、バイオベンチャーで業務経験を積み、12年前にデイサービスの立て直しを依頼され(別法人)、介護業界に関わることとなった。以降、同法人の運営する特別養護老人ホーム施設長となり、2017年社会福祉法人とらいふに移籍。特別養護老人ホーム施設長、同法人統括施設長を経て現在に至る。対外的には、武蔵野市の要介護認定審査会委員(2016年度)や武蔵野市特養施設長会副会長(2019年度)、会長(2022年度)を経験した他、現在は、東京都社会福祉協議会の分科会委員、武蔵野市の市民防災協力委員、地域の福祉の会役員、コミュニティーセンターや防災会の運営委員に就任している。2025年度からは武蔵野市の男女平等推進審議会委員に就任予定。

多様な働き方を支える介護の現場

東京都が推進する「介護WITH」事業の一環として、介護の現場で多様な働き方を実現している事業所が選定されています。今回は、選定事業所の一つである社会福祉法人とらいふの大脇様に、取り組みの背景や職員の活躍について伺いました。

株式会社Blanket代表秋本さん(左)と、社会福祉法人とらいふ業務執行理事大脇さん(右) 多様な人材が集まる職場づくり

社会福祉法人とらいふでは、介護業界の未来を見据え、他業種との交流を大切にしながら、新しい取り組みを進めています。法人のトップを含め、全員が「とらいふに関わって良かった」と思えるような環境づくりを目指しています。
特に注目すべきは、ラグビーレフリーとしても活躍する職員の存在です。彼女は日本で唯一のライセンスを持ち、世界的な試合にも出場する実力者です。レフリーとしての経験は介護業務にも活かされており、判断力の速さや状況把握能力が向上しています。

仕事と夢を両立させる支援体制

職員の活躍を支えるために、社会福祉法人とらいふでは柔軟なシフト調整を行っています。ラグビーレフリーの試合は数ヶ月前から決まるため、それを優先して勤務スケジュールを調整しています。また、練習試合や合宿がある際は平日でも休みを取得できるよう、法人全体で支え合う体制を整えています。
最近では、非常勤から常勤へ雇用形態を変更し、安定した収入を確保できるようにしました。これにより、夏休みや冬休みなどの長期休暇を取得しやすくなり、レフリー業務にも支障が出ないような支援が可能になっています。

チームワーク向上の取り組み

職場のチームワークを高めることも重要な課題の一つでした。以前は職員同士の関係性が十分に築かれておらず、意見の衝突が見られることもありました。しかし、利用者だけでなく、職員同士の誕生日会を開催することで、自然と会話が生まれ、関係性の改善につながりました。
また、意見交換の場を理事長自らが支援することで、法人全体の結束力が強まり、職場の雰囲気が大きく改善されました。その結果、チームワークの向上が業務効率の改善につながり、稼働率も向上しました。

介護と多様なスキルの相乗効果

ラグビーレフリーとしての経験は、介護現場でも大いに活かされています。彼女は、細かな変化を察知し、的確な判断を下す能力に長けており、利用者の健康管理や緊急時の対応にも優れています。また、場の雰囲気を和らげるユーモアも持ち合わせており、利用者を笑顔にする工夫を欠かしません。

地域とのつながりを強化する「とらいふぁーむ」

社会福祉法人とらいふでは、地域とのつながりを深めるための新たな試みとして「とらいふぁーむ」を立ち上げました。施設内で野菜を育て、その成長を楽しむことで、利用者に生きがいを提供しています。さらに、山芋掘りやビールのホップ栽培などを行い、収穫した作物を地域住民とともに楽しむイベントも実施しています。
こうした活動は、入居者増加にも寄与しており、地域全体で支え合う介護の形を築いています。また、社会福祉法人同士が連携し、研修会を実施するなど、人材育成の面でも協力体制を強化しています。
また、今後はボランティアの受け入れを拡大し、地域全体と連携した介護活動をさらに推進していく考えです。

介護業界の新しい可能性

「介護WITH」事業を通じて、多様な夢を持つ人々が介護の現場で活躍していることが明らかになりました。そして、それを支援する事業所も増えています。柔軟なシフト調整や職場の関係性を強化する取り組みは、介護業界の未来を明るくする大きな要素です。
社会福祉法人とらいふのような事業所が増えることで、介護職の魅力がより広く伝わり、業界全体のイメージアップにもつながるでしょう。

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